真綿とクリスマスのニューヨーク
町田市立国際版画美術館でのインプリントまちだ2018展の間、(まちサポ)という近隣在住のボランティアさん達に、作品の監視で大変お世話になりました。
そのボランティアさん達と、会場でお話しさせていただく機会がありました。
「作者です、どうぞよろしくお願いします。」と名乗りでると、
「えっこんなにお若い先生だとは思いませんでした〜」と驚かれましたが、先生でも無いですし、そんなに若くも無いです…と恐縮しました。
作品の感想や、お客さんの反応などを教えていただきました。
そして「アメリカのどちらにお住まいですか?」「ニューヨーク市です。」という会話から、そのボランティアさんが以前にした、ニューヨーク旅行のお話しに。
「当時ニューヨークに住んでいたお友達が、クリスマス前のニューヨークはキラキラしていてとっても素敵なので遊びにきたら、というので行ってきたんです。
でも、冬のニューヨークは凄く寒いという事で、どうしようかと思っていたら、近所のお布団屋さんから、真綿を使えばと言われました。その真綿を中に挟んだガーゼの背当てを自分で作って、リュックみたいに背負えるようにして、服の下につけて行きました。」と。私が住んでいる街の話から、真綿へ…おぉ、そこにつながるか!と静かに感動してしまいました。
クリスマスから年末年始まで、キラキラ感が増すニューヨーク市の街(2017年の写真)
インプリントまちだ2018展のインスタレーション作品「繭」では、真綿も素材に使いました。
真綿とは、生糸が取れない品質の繭を、アルカリ系の薬品で精錬した後、水中で手で徐々に伸ばして作ります。約30cm四方に四角く伸ばしたものは「角真綿」と呼ばれています。昔から座布団やわた布団の表面に伸ばしてかぶせ、綿が動いて片寄らないようにしたり、防寒用具としても使われてきました。真綿には独特の粘りというか、物にひっかかる感じがあるので、綿の上に薄く伸ばしておくだけで、綿が動かなくなるようです。真綿は触るだけで、ものすごく柔らかく、暖かいものですが、私のように銅版画の制作で手指が荒れている人には、ひっかかる感覚が軽く恐怖でもあります…
婚礼の綿帽子のルーツも、真綿にあるそうです。
真綿の作り方(日本真綿協会サイトより借用)
ボランティアさんからは他にも、「嫁ぎ先の親戚が百貫(375kg)の繭を出荷する養蚕家で、毎年手伝いに行っていた。最初は、蚕を触るのが怖くしてし方がなかったけれど、今でも蚕をつまんだときの冷たい感触を覚えています」等、貴重なお話しを聞かせていただきました。作品の監視もして頂いた方々から、養蚕の記憶のお話しを聞くとは思っていなかったので、感激しました。
⭐︎2018年6/30~9/2「インプリントまちだ展2018」荒木珠奈 記憶の繭を紡ぐ 町田市立国際版画美術館 終了しました。ありがとうございました!
真綿については、日本真綿協会(http://mawata.or.jp/)のサイトが詳しく、真綿作りの講習会もされています。