日記・繭の記憶/Cocoon Memories

アーティスト荒木珠奈の2018年夏予定の展覧会(インプリントまちだ@町田市国際版画美術館)にむけて、蚕を飼ったり、制作準備等の記録です。

達磨さんとお蚕さん

 お正月が近いので、縁起物のことを。

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画像「だるまで巡るニッポン」より 武蔵野美術大学 美術館・図書館発行

私は数年前から「達磨」が好きで、だるま市が開かれる飯能、立川、調布、葛飾などを巡ったりしてきました。アメリカに住んでいる今も、この季節には新しいだるまさんを探しに市に行きたくて、うずうずします。

東京や多摩地区の市をいくつか見ていると、だるまさんの顔の種類が数種類に限られてるように見えました。実際、多摩地区には現在数件のだるま生産者しか残っていないそうです。

現在、だるまに掛ける願い事は「家内安全」「無病息災」「合格祈願」などが多いのでしょうが、養蚕の神として祀られていた時期もあったそうです。

 

蚕が幼虫の時に4回脱皮をします。脱皮準備の動かなくなる時期を「眠」とよびます。そして、眠(脱皮)が終わり、また活動を始めることを「起きる」といったそうです。そこで、だるまの「七転び八起き」にかけて、養蚕農家の信仰を集めたのだそうです。

 

もうひとつ、養蚕とだるま信仰の面白い関係があります。

横浜開港が、日本の絹糸輸出が成長する契機になったわけですが、だるま生産にも必要な赤い染料「スカーレット」も横浜港開港によって輸入されるようにもなりました。

それまでは赤の染料が入手困難だったのが、安価なスカーレットの輸入によって、だるま生産者が増えたのそうです。

 

そして、だるまの生産は養蚕の広がりとともに埼玉県、栃木県、福島県茨城県、多摩地区、神奈川県へと伝わっていったといわれています。

 

蚕が、繭を作るところまで病気やネズミなどの被害にあわず、無事に成長できますように、豊蚕でありますように…という昔の人々の願いを、だるまさんは真っ赤なお顔で受け止めていたのでしょう。

 

⭐︎2018年夏「インプリントまちだ展2018」町田市立国際版画美術館にて開催予定⭐︎

 

参考資料 /「だるまで巡るニッポン」より 武蔵野美術大学 美術館・図書館発行