達磨さんとお蚕さん
お正月が近いので、縁起物のことを。
画像「だるまで巡るニッポン」より 武蔵野美術大学 美術館・図書館発行
私は数年前から「達磨」が好きで、だるま市が開かれる飯能、立川、調布、葛飾などを巡ったりしてきました。アメリカに住んでいる今も、この季節には新しいだるまさんを探しに市に行きたくて、うずうずします。
東京や多摩地区の市をいくつか見ていると、だるまさんの顔の種類が数種類に限られてるように見えました。実際、多摩地区には現在数件のだるま生産者しか残っていないそうです。
現在、だるまに掛ける願い事は「家内安全」「無病息災」「合格祈願」などが多いのでしょうが、養蚕の神として祀られていた時期もあったそうです。
蚕が幼虫の時に4回脱皮をします。脱皮準備の動かなくなる時期を「眠」とよびます。そして、眠(脱皮)が終わり、また活動を始めることを「起きる」といったそうです。そこで、だるまの「七転び八起き」にかけて、養蚕農家の信仰を集めたのだそうです。
もうひとつ、養蚕とだるま信仰の面白い関係があります。
横浜開港が、日本の絹糸輸出が成長する契機になったわけですが、だるま生産にも必要な赤い染料「スカーレット」も横浜港開港によって輸入されるようにもなりました。
それまでは赤の染料が入手困難だったのが、安価なスカーレットの輸入によって、だるま生産者が増えたのそうです。
そして、だるまの生産は養蚕の広がりとともに埼玉県、栃木県、福島県、茨城県、多摩地区、神奈川県へと伝わっていったといわれています。
蚕が、繭を作るところまで病気やネズミなどの被害にあわず、無事に成長できますように、豊蚕でありますように…という昔の人々の願いを、だるまさんは真っ赤なお顔で受け止めていたのでしょう。
⭐︎2018年夏「インプリントまちだ展2018」町田市立国際版画美術館にて開催予定⭐︎
参考資料 /「だるまで巡るニッポン」より 武蔵野美術大学 美術館・図書館発行